別れ、新たなる旅路

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 何とか一行は生きていた。全員絡まって団子のようになりながら呻く。全身が痛んで誰かが動くたびに文句を言った。 「足……、痛っ!」 「バーバラ、早くどけ!」 「兄さん、杖が刺さってる!止めて……」 「カレン……いい加減に降りろよ!」 上のやり取りに痺れを切らしたエルメラスはたまり兼ねて唸り声を轟かせた。 「早く降りやがれ……一番重いのは誰だと思ってる?」  慌てて全員彼の上から降りた。一息ついた頃、ウィーナが馬達を元に戻し、背中を撫でてなだめる。馬達は困惑していた。緑が目にしみるとばかりに瞬きをしている。重い荷を馬の背に分散させ、再びエルメラスの背へ乗り込んだ。ジーンは一人残って連れてきたユニコーンの背に跨がった。  エルメラスが強い潮風に乗りながら身軽に舞い上がる。アリアは競争するように疾駆した。その後を他の馬も必死に追い掛ける。  しばらくすると視界は緑一色になった。ちらちらと草原の蛮族の野営地が見られる。ジーン、ウィーナ達と祖先は同じだ。蛮族と呼ばれるだけあって気性が激しく、部族長の地位をめぐる争いは絶えない。  角をかかげる鹿、穴兎、それらを追う狼。そして、海上で目撃した大白熊に再び遭遇した。かなり気が立っている様子なので静かに離れる。緑の世界は命に満ちていた。
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