別れ、新たなる旅路

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 夜は獣避けのために大きめの火を囲んだ。明日にはタヒチ・ドーラ入りすることができそうである。話題は行き先のことへ移った。 「タヒチ・ドーラは楽しいよ。サレムみたいにいろんな異種族が入り乱れている都なんだ。大きな歌劇場もあるし」 ジーンが目を輝かせてカレンに話して聞かせた。彼女も劣らず目を輝かせる。 「タヒチ王の話は知っているかい?」 カレンは頷いた。誰でも知っている昔話の一つである。 「醜くてどこの姫にもきてもらえなかった優しい王様が侍女と恋に落ちたって話だよね」 それはカレンに養母が繰り返し話して聞かせた物語だった。 「そうだよ。それをよく思わなかった側近と王様の弟は共謀して王様を毒殺し、侍女ライカに罪を着せた。ライカは処刑される直前に死んだ王様への想いと罪を着せた者達への呪いを叫んで殺された」 「でも、ライカの体は千羽の深紅の鳩へ変わって消えていったんだよね」 カレンはその話が好きだった。醜い王を自分に重ねているのかもしれない。 「その後は一週間も国中の水が血の色に染まり、相次いで側近と王様の弟は急死した。国は二つに分断されてローランドに間接統治されるようになったんだよ」 カレンにとって歌劇は憧れだった。きっと華やかで素晴らしく楽しいに違いない。隣でもウィーナがため息をついた。 「私、一目でもいいからエーヴァ・ドロシアが見たい」 ジーンも憧れのため息をついた。カレンは聞いたことのない名前に首を傾げた。
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