ガラスの都、タヒチ・ドーラ

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 西域の綺羅星と謳われる都、タヒチ・ドーラは彼方にあるにもかかわらず輝いていた。朝日が差すにつれて華やかな輝きはさらに鮮やかになる。その美しさは数多の詩人に謳われ、自分達の美意識に誇りを持つハイ・エルフすら驚かす。  かの都はアシーラ最大のガラス産業で栄え、間接統治している大国ローランドの城下をも凌いでいる。ローランドにとっては貿易の入り口であり、重要な財源の一つだ。  タヒチ・ドーラの美しさは街中を飾る絢爛な色ガラスにある。街並みを設計したのはローランド王十二代目の末弟、ロラヌ・ローランド。彼はドワーフ達に学んだ希代の建築家と伝えられている。  全ての建物に特産品の精巧な切り子ガラスを惜しみ無くあしらい、道の舗装に至るまで粉状に粉砕されたガラスを塗してある。あらゆる種類の色ガラスはきちんと角度まで計算されて設置され、日が差す限り輝き続けるのだ。  その中をいかにも田舎者じみた風体の一行は歩いていた。エルメラスは大きく引き伸ばしたローブで全身を覆い尽くし、よたよたおどおど歩く。  サレム、シーヤと華やかな大都市を訪れてきたが、タヒチ・ドーラは華やかさを通り越して派手だった。とにかく異人種が入り乱れている。人々の服装は人種を問わず度派手で奇抜。  こぼれ落ちそうなほど飾り立てた大きい帽子、大胆な切れ込みを入れたドレス、高く高く結い上げた見上げるような髪型。倒れてしまうのではないかという踵の高い靴。人種間の仲の良さも大きな特徴だ。小意気な流行りの衣服に身を包んだ若者達が艶やかな装いの女性達を見つけては呼び止め、楽しそうに笑っている。
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