ガラスの都、タヒチ・ドーラ

4/18
2409人が本棚に入れています
本棚に追加
/924ページ
 優美に飾られた螺旋階段を登ると、眼下に壮大な客席、絢爛豪華な舞台が広がった。舞台袖の楽士団が軽快な伴奏を奏で始める。どよめきに迎えられて時の歌劇女優、エーヴァ・ドロシアが優雅に舞台へ歩き出した。  タヒチ・ドーラ歌劇は豪勢な衣装と顔半分を仮面で隠すのが特徴である。仮面は演目によって異なる。顔立ちや人種で役柄を限定されないようにするためだ。  今、演じられている舞台は思い込みが激しい領主と耳の遠い執事が引き起こす勘違いでいろいろな騒動が起きると言う喜劇である。  エーヴァ演じるは思い込みの激しさゆえ煮え切らない領主にやきもきする商人の娘である。彼女は美しさの中の堂々とした気迫に溢れていた。商人の娘は領主の彼女に対する愛情を疑う。
/924ページ

最初のコメントを投稿しよう!