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宿を探す前に双子が旧友に会いたいと言うので、再びきらびやかな街路を行く。さんざん待たされたアリアと馬達はいらいらと不機嫌で、暴れ出さないかと気が気でない。
「見ろよ、カレン。ヴァンパイアだ」
黒い長衣の集団をエリックが指差した。
「日の光を浴びても平気なの?」
「さあな。そうなんじゃないか」
「早く建物の中へ入りたい」
エルメラスがたまり兼ねて訴えた。いつものように怪訝な視線を浴びずにすんではいるが、人込みは苦手なのだ。
「大丈夫。着いたよ」
立ち止まったのは小さな呉服店。「マーチ・ガゼル呉服店」と看板が下がっている。あれだけきらびやかな建物を見た後ではかなり地味で小さく感じる。
「学院時代の友達なんだ」
「懐かしいな」
簡素なドアには奇妙な取っ手があり、小さな金文字で「少々お待ちください」とある。文字はしばらくすると「お入りください」に変わった。
一行はドアに手を掛けた瞬間、たちまちのけ反ってしまった(カレンはひっくり返った)。刃を振りかざす空飛ぶ鋏の群れが襲いかかったのだ。危うく頭の皮ごと髪の毛を刈り取られるところであった。
「ごめんなさいね。利かん坊な鋏どもが」
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