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亡くなった女の遺体を整えた夫妻は、今夜の恐ろしい出来事を思って身震いする。この女の素性は何も分からない。明日には村中が大騒ぎになる。もし、女が追われていた身であったら村に危険が及ぶ可能性もある。
あれこれ考えあぐねる夫に対してアニタは至って平常だった。腕の中で母の死も知らず部屋を見渡す無垢な赤子をあやしながら、その可愛さにうっとりする。
「あんた、見てごらん。この子、すごく綺麗な目をしてるから」
赤子は母親と同じ、宝石のように赤みを帯びた不思議な瞳をしていた。ギロンは初めそれを恐ろしく感じたが、見つめられるとその不可思議な視線に引き付けられる。
「可哀相にな。母さん死んでしまって……」
ギロンはアニタから赤子を抱き取った。
「お前、俺達の子になるか?」
彼はにこやかに赤子へ問い掛ける。赤子は返事の代わりに深い眠りに落ちた。
「お前は俺達の子だ。カレン・スカーレッド、俺達の娘」
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