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七夕の夜の事。
『なぁ…なぁ、こっち見てみてよ』
声がする方を素直に振り返ってみたあたしは、次の瞬間笑いを堪えきれずに噴き出してしまった。
『あはは…どうしたの、それ。ステッキなんて使う年でもないじゃない』
彼がステッキを持ち出してベランダに立っていた。もう片方の手にはリモコン…リモコン!?
すると私が気付くが早いか、彼はリモコンのスイッチを押すと、チャップリンのようにおどけたポーズを取りながら
『Will You Dance?』とリモコンを置き、私へと片手を差し出した。
BGMがかかる…ワルツだ。
何てキザな事をするんだと私が呆れていると、お辞儀で私に片手を出したまま、視線を私の方へ向けてウインクした。
本当にこの人は……。
私も自然と顔がほころんでしまう。
でも……
少しイジワルしたくなった。
『でも私、ソワレ着てきてないわよ』
さぁ、どう返事をしてくるかしら…。
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