131人が本棚に入れています
本棚に追加
恋のフーガ
シャワーから勢いよく出た水を、縁は頭から浴びた。
熱い湯だとすぐにのぼせてしまうし、夏は冷たい水のほうが涼しくなって気持ちいい。
身体が冷えてくるのを感じながら目を閉じると、新井のことが頭に浮かぶ。
……強く言い過ぎちゃったかな。
血が上っていた頭も落ち着いてきて、徐々にさっきの新井に対しての自分の態度に後悔してきた。
そして、新井の言葉も思い出す。
もう、ゆかりちゃんに絡まないことにする。
じゃぁね、バイバイ。
「……俺、嫌われた…のかな」
口に出して呟くと、じわじわと胸に寂しさが込み上げてきて、縁は下唇を軽く噛んだ。
「…やっぱ、謝ろう。
……っ、なんだってんだよ」
縁はシャワーを止めて急いでタオルで身体を拭いた。
新井を捜して、さっきのことを謝ってもう一回話したい。
一人の生徒をこんなに気にしてしまっていいのか、そう考えると躊躇いはあった。
今日はほっといて、来週学校で様子を見ようかとも考えたが、新井がちゃんと学校に来るか怪しいし、その時無視されるのかと思うと苦しい。
手早く服を着ると、縁は部屋を飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!