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少年A
「相田ー、朝倉ー、…新井・・・新井悠吾」
またか。
出席をとっていた縁はため息をついた。
「新井は今日も、休みか?」
教室を見渡すと、一番後ろの席の生徒が手を挙げた。
「ゆかりセンセー、新井は午後から来るって言ってたよ」
縁は口の端を歪めた。
志村縁は、大学を卒業して、この高校に赴任したばかりの新米教師だ。
二年生の数学の授業を受け持っているが、この新井という生徒、もともと一年のころからあまり学校に来ていないらしいが、縁の授業にはまだ最初の一回しか出ていない。
安田先生がいてくれたらなぁ・・・
最初は新任の縁のために、安田という女性の教師と二人で数学のクラスを受け持つということだったが、突然安田が産休をとることになり、縁が一人でクラスを担当することになった。
サバサバして男っぽい性格の安田は、
「ごめんねぇ、生理来ていないのなんて全然気付かなかった」
と笑ったときにはすでに妊娠四ヶ月になるところだった。
授業が終わると、縁はさっきの後ろの席の生徒に、
「新井が来たら、職員室に来るように言っといてくれ」
と声をかけて教室を出た。
もうすぐ中間テストがある。新井にもそろそろ授業に出てもらわなければ…。
憂鬱で、職員室に戻る足どりは自分でもおかしくなるほど重かった。
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