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「ゆかりちゃん、元気ないね」
食事が終わり、ベッドでくつろいでいた新井が、突然そう言って縁を見た。
「ん・・・そうかな?」
食器を洗いながら、縁は俯いた。
「うん、なんかいつもよりテンション低いみたい。なんかあった?」
「いや・・・疲れてる、のかな」
「そっか…あ、俺が、やろっか」
「いや、いいよ」
新井が起き上がったのを縁は止めた。
確かにいつもなら、新井に「ちょっとは手伝えよな」とか言いながら料理をしたりするが、今日はほとんど何も喋らなかった。
理由は・・・たぶん、頭の中がいっぱいだったから。
新井がどんなやつなのか、気になって仕方がない。
西嶋が言った喧嘩のことが、頭を何度も過ぎる。
「新井、俺に隠し事、してないよね…?」
「…隠し事?」
なぜか、つい口に出してしまった。
新井は訝しげな表情を縁に向け、首を傾げた。
「…新井が、他校の生徒と喧嘩してケガさせたって…噂になってる。
…新井じゃ、ないよな?」
ゆっくり振り返って新井を見ると、新井は黙って下を向いていた。
「新井…?」
「俺だよ。それ」
新井は目を伏せたまま呟いた。
「おまえ……」
「たしかに、俺、先週知らないやつ殴ってケガさせた。でも…」
「おまえっ、マジで言ってんのか!?」
新井が何か言いかけたのも耳に入らず、縁はガチャン、と食器を置いて怒鳴った。
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