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「…はあ。」
帰る準備をして職員室を出ると、外も校内も真っ暗になっていて、縁はため息をついた。
最近ため息ばっかりついてんなぁ。
車に乗ってネクタイを緩めると、駐車場の裏の出入口から出ていく生徒が見えた。
「…新井?」
車を出て声をかけると、新井は一瞬背を向けて走り出そうとしたが、縁が駆け寄ると足を止めた。
「新井、こんな時間まで何してんだ?」
「いや…」
新井が顔を背けると、こめかみのところから血が流れているのが見えた。
「おま…っケガしてるぞ!」
「ん、バイクでこけちゃって…」
昼間と違って大人しい新井を、縁は戸惑った顔で見つめた。
「…送ろうか?」
縁が自分の車を指すと、新井は首を横に振った。
「いいよ、家に帰る気ないし」
「バっカ…!」
新井の態度が妙に頭にきて、縁が思いきり新井の腕を掴むと、新井は顔をしかめた。
「ぃって…」
「…おまえ、手!めっちゃ腫れてる!」
新井の手首の部分からの異常な腫れに、縁は目を見張った。
「乗れよ、病院連れてくから!」
そう言って車のドアを開けると、新井は諦めたようにため息をついて大人しく車に乗った。
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