131人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「ほれ」
部屋に入り灰皿を渡すと、新井は罰が悪そうに受け取った。
「…ゆかりちゃん、タバコ吸うの?」
「まーな。ヘビースモーカーってほどではないけど」
自分もタバコに火をつけると、縁は砂嵐になっているテレビのチャンネルを変えた。
「先生の家でビール飲んでタバコ吸うって、いいのかな」
新井がそう言って笑った。
「バカ。いいわけないだろうが。今日だけだからな、マジで」
「ありがと。優しいね、ゆかりちゃん」
聞こえなかったふりをして、縁はタバコを灰皿に潰すと、床に横になった。
「明日も学校だから、寝るぞ。新井、ベッド使っていいから」
「え、いいよ。俺が床で寝るよ」
「いいって。俺どこででも寝れるし」
「でも…」
「もう、黙って外に出たりすんなよ」
縁がそう言うと、新井は黙った。
「…ゆかりちゃん」
少しして、声をかけてみると、すでに縁は寝息をたてていた。
しゃがみこんで縁の寝顔を覗いても、縁は完全に爆睡していて全く反応しない。
新井はそっと縁を抱えて持ち上げると、ベッドに横にならせた。
「ん…」
布団をかぶせると、縁は寝返りをうって体を丸まらせた。
「ゆかりちゃん、無防備すぎ。…襲っちゃうぞ」
縁の隣に横になって、縁の頭を撫でると、笑みを浮かべて新井は目を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!