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非行少年
擦り傷、打撲、手首の腱の炎症。
新井を病院に連れて行くと、そう診断されて手当を受け、湿布をもらって病院を出た。
車に乗るまで、新井はずっと無言だった。
「…家まで送るよ。新井、家どこらへんなんだ?」
エンジンをかけて新井を見ると、新井は外を向いていて答えない。
「…新井」
「…っせぇな」
ようやく振り向いて、新井は縁を睨んだ。
カッチ───ン。
っかわいくねぇっ。
イラッとしたのをなんとかこらえて、縁は睨み返した。
「…こっから自分で帰るし。じゃぁな」
突然新井が車のドアを開けようとして、縁は慌ててそれを止めた。
「おいっ!ケガしてんだから!
もう夜遅いし、俺の立場上ここで帰せないって!」
新井は怪訝な表情で縁を見つめていたが、突然縁の肩を掴んだ。
「…じゃぁ、センセーんち行く」
「…は?」
縁は一瞬頭が真っ白になったが、慌てて首を横に振った。
「むっ…無理無理!学校の生徒泊めるなんて…」
「じゃぁここで降りる」
「わぁっちょい待ち!
あー、あー、わかった!俺んち連れてくから!」
慌ててドアに手をかけた新井を押さえると、新井は笑ってシートベルトを締めた。
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