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「俺が、美伽を好きだったのも本当だよ。」
美伽は一度もこのネックレスを付けてくれなかったのに、見る度に彼女を思い出す。
美伽との思い出が、形として残ってるのはこのネックレスぐらいだからかな。
「もう、いいじゃん。そんな終わったような顔するなよ。」
猫はふっと笑って、屋上の柵に手をかける。
「どんなに後悔したって、過去は変わらないんだからさ。」
青い空を見つめる猫の目は、どこか寂しそうで。
「…猫。これ、」
「自分で捨てるんだよ、龍」
まだ最後まで喋ってないのに、口をはさんでくる猫。
…そんなの、わかってるっつーの。
「…なぁ、今回は、大丈夫だよな?」
手に持ったネックレスを高く上げたまま、俺は問い掛ける。
「桜ちゃんのこと、信用できないのかよ?」
俺は、それを空に向かって放り投げる。
太陽は最後に、そのネックレスが輝いたことを知らせてくれた。
俺は、青い空に向かって大きく頷く。
―大丈夫だって、美伽が言ってくれた気がした。
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