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あまりの勢いのよさに廉の酔いも醒めた。
横に座っていた女の子達は
「怖いオバサン!」
と聞こえるように梨佳子の背中に投付けてきた。
廉は酔いが醒めてふと我に返ると、
側に座っている女の子達をウザったく払いのけて慌てて店を出た。
『何やってんだ…俺・・・』
情けなさで一気に酔いも醒める。
タクシーの中で資料に目を通しながら、車の窓ガラスに映る自分の姿を見て
「ふぅ=3」
大きなため息をついた。
翌朝
いつものように社長のお迎えをする為、梨佳子は会社の玄関に立った。
「おはようございます。」
社長の後ろから歩いてくる廉と目を合わさないですむくらい長く深く頭を下げた。
今日の廉はさすがにネクタイを結んでの出勤。
専務室に向かう廉を無視して梨佳子は社長室に向かった。
秘書課の女の子達は、昨日廉に食事に連れて行ってもらったお礼を我先にと擦り寄って行く。
今日は重役との初の御対面で、いつになく緊張していたのか、まとわりつく女の子達を完全に無視して歩いた。
社長から廉を呼ぶように言われ専務室に向かった。
トントン゛
廉の部屋をノックして
「社長がお呼びです。」
とにかく目を合わさないように業務的に伝えた。
立ち上がった専務を見たら襟は少し出ていてネクタイは曲がって…
全く締まりのない格好。
はぁ・・・・
『ネクタイもまともに絞められないのか…』
「専務…少し失礼します。」
廉の首元に手を回しネクタイを結び直し襟を正しシャンとさせた。
廉は急に手を回してくる梨佳子に少しとまどいながらも、されるがままジッとしている。
梨佳子は先に会議室に向かい続々と集まってくる重役達の前に資料を配り始めた。
昨日、廉に資料を渡したにも関わらず、あの時間からでは多分目を通すのがやっとだろうと、廉の資料にだけ書き込み入りの物を置いた。
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