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橋本は梨佳子の肩を掴んだまま下を向いて、
ハァー
一度大きなため息をついた。
「僕は納得はできそうにもないな」
小さな声でつぶやいた。
「・・・・。」
これ以上梨佳子は何も言う事ができない
『どう言えば分かってもらえるだろう・・・』
申し訳ないと思いつつ、ハッキリ断らなくてはともう一度切り出す言葉を捜した。
「梨佳子さんが誰かのことを好きと聞いた今でも、そうですか・・・と言うのが難しい程、梨佳子さんの事を好きになってしまってる。」
「・・・・。」
橋本は急に表情を変えて、
「今日は送るよ、またゆっくり話そう。」
「・・・・。」
「いえっ電車で帰るので大丈夫です、ありがとうございました。」
梨佳子はゆっくりと車のドアを開けた。
バッ=3
梨佳子が片足を下ろした時に橋本に腕を掴まれた。
「えっ?!」
橋本は少し上目遣いに、
「僕にチャンスはないのかな」
「僕は、梨佳子さんが振り向いてくれるのを待ちたいんだけど」
橋本からは思いがけない言葉が発せられた。
梨佳子は、簡単な気持ちでお見合いをしてしまった事、
橋本を安易な自分の考えで振り回してしまった事に申し訳なく思い、
「橋本さん、私なんかを待つなんて言わないでください。」
梨佳子は、これ以上思ってもらっても・・・
自分にはどうする事もできない
としか気持ちを伝える事しか今は思いつかない。
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