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「僕は勝手に待つつもりだから・・・・まだ親達にも言わないよ!」
「・・・・。」
梨佳子は苦い顔で車のドアを静かに閉めた。
「じゃ、おやすみ・・・」
橋本が掴んでいた手が離された。
「おやすみなさい。」
まだ見られてるのが分かる。
振り向いたらダメ。
橋本さんの誠意には応えられないんだから。
『本当に勝手な事を言ってごめんなさい。』
『ごめんなさい。』
離れて行く間中、梨佳子は何度も繰り返し呟いた。
橋本の姿が見えなくなった途端、緊張の糸が切れたのか体中の力がふにゃふにゃと抜けていった。
どれくらいの時間をかけて駅まで行ったのか、どうやって電車に乗ったのか分からない。
ただ呆然と家に向かっていた。
・・・・!!!
マンションに向かってフラフラと歩いてくる梨佳子の姿を見つけた廉は、
バッ=3
車のドアを勢いよく開けて梨佳子の元へ駆け寄って行った。
「梨佳子っ=3」
「今まで連絡せずに何考えてんだよ!!」
「連絡入れろって言っただろ!」
「携帯まで切ってただろ!」
梨佳子は廉の顔を見たとたん涙が込み上げてきて、「泣いたらダメ=3」 と思っても、溢れてくる涙を止めようにも止める事ができない・・・
体は固まってしまったように1歩踏み出す事すらできなくなった。
「どうした?!何かあったのか?」
「・・・・・。」
何も言わずに首を振るだけ。
廉はフラフラな梨佳子を、とにかく部屋まで連れて行こうと腕を回し支えた。
梨佳子はうなだれるように、廉にもたれかかる。
『だから・・・一緒に行くって言ったのに、無理して1人で行くから・・・』
廉は今まで心配していた時間のぶんだけ思いきり梨佳子を抱きしめた。
『とにかく帰って来たんだ。』
まだ涙の止まらない梨佳子の肩を抱きソファーに座らせ
梨佳子の目線に腰を落とし、
「何か飲むか?」
顔を覗きこんで優しく言った。
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