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……煩い。
リビングから響くけたたましい電話の音で目が覚めた。
急速に現実が輪郭を得ていく。嫌な瞬間。
数秒経っても鳴りやまないので仕方なくベッドから這い出た。
……と。
濡れた感触。
軽く焦って自分の体を見た。
「あ―……。」
部屋の電気は点きっ放し。散らかった部屋。全裸の自分。
そして真っ白なシーツには赤い染み。
頭がガンガン痛む。
とにかくその不愉快な電話の音を止ませるべく、裸足で床の上の様々なものをよけながらリビングへ。
リビングも散らかっていた。
溜め息をつきながら、片手で痛む頭を押さえつつ受話器を取る。
「はい。」
「山縣由英様のお宅ですか?」
受話器の向こうは聞き慣れない男の声。
とてつもなく痛む。
「はい――」
「今朝、双子のお姉様が――」
痛い。
「変死体で発見されました。」
「双子の姉……」
「ええ。貴女の。」
頭が、割れそうだ。
「サヤ……」
姉の名を呟きながら、ただぼんやりとあのシーツに染みた赤ワインのことを考えていた。
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