新たな出会い

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 政府の扱いには些か腹が立ったが、殺されるよりはマシと思い、SMSキャリアの為だけに建設された地下都市へとやって来た。  全身をくまなく調べられると、左腕の手首より若干上あたりに超小型チップ(約3mm程度)を埋め込まれ、畳三畳程の鉄格子に入れられた。  周りを見渡すと、右隣には自分と同年代、若しくは若干歳上とおぼしき少年が膝を抱え項垂れており、目の前には寝転がって天井をじっと見つめる同じ歳かさの少年がいる。少し離れた鉄格子には茶金髪の少年が踞っていた。  雪継の右隣の少年…彼が実は森で、目の前にいるのが北斗。そして茶金髪の少年が輝だった。  この時は、まだ彼らと仲間になるなどとは知るはずも無く、雪継はただぼんやりと、居るな、程度の記憶にしか留めなかった。  格子牢には1日に2・3度、医者が訪問して来て、注射をしたりカウンセリングをしたりした。  そして時々、牢から出されては豪奢な部屋へ連れて行かれ、何人もの大人達と禅問答のように話をする。  1日1日がその繰り返しで、一週間が瞬く間に過ぎた。  その間、ずっと牢屋に入れられたままで、暇を潰そうにも全くと言って良い程、物が無い。  チップが反応する為、逃げる事も容易には出来なかったし、見張りの兵は入り口に立っているが、当然相手にもしてくれなかった。  次第に雪継以外の三人はポロリポロリと日常会話や身の上話しをするようになって行ったが、雪継はその会話に入る事はせずに知らん顔を決め込んでいた。  やがて一週間と何日かが過ぎた頃、いつものように別室へ連れ出されたが、入った部屋には、毎日回診に来るあの医者がいるだけで、他に人の気配はない。  何だかいつもと様子が違う事に、雪継はおかしいと感じ、目だけで辺りを伺った。  目の前にいる医者は渋い顔で用紙を何度もペラリペラリと見直していたが、顔を上げて真っ直ぐに雪継を見つめると突然にやりと笑う。 「お前、採用ね」 たった一言そう告げられ、何が?という質問する前に、牢へ連れ戻された。  あの時は一体何の事だ?と訳が分からなかったのだが、今思えば、あの一週間と何日かが Tripperへ入隊させる為の審査期間だったのだと雪継は思う。
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