プロローグ―prologue―

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「もう3年か…」 月明かりが水面を照らし、控えめに輝く夜の海を眺めながら、ぽつりと呟いた。 口元からは白い吐息。 静寂に包まれた暗闇の中で1人…自分は、どれくらいこうしているだろう。 来るはずのない人を、待っているわけじゃない。 そんな期待なんて、苦しくなるだけだから。 「………あめ?」 ふと、柵に置いた手にひんやりと冷たい刺激を感じ、空を見上げる。 すると、真っ暗な世界にちらちらと白が混ざっていた。 「雪だ…」 空に向かって両方の手のひらを広げる。 触れた瞬間、スッと溶けて消えていく儚い雪。 全ての始まりはここから。 あの時この場所で…もし、出逢えなかったら。 今もきっと、闇に捕らわれたままだったよね。 ねぇ、君は… 「メリークリスマス」 君は、幸せですか?
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