名前―name―

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「やっ…やだ!離せ…」 「静かにしろ!」 パンッ…と、乾いた音が室内に響く。 「まったく…誰のおかげで生活出来てると思ってるんだ」 「やぁっ…」 触らないで。 怖い。 気持ち悪い。 誰か……… 誰にも届かない、そうわかっていながらも伸ばした手。 だけど、微かに感じる温もり。 これは、何? もっと近くに… 「……あ、ゆ、夢…?」 目を開くと同時に起き上がると、バサッと布団が大きな音を立てた。 そこは、見慣れない部屋。 そうだ、あたし… 見知らぬ男に拾われて、ここはその男の部屋で。 じゃあ、今の温もりは? 「あ、起きた」 「…え」 緊張感のない、間の抜けたような声に視線を移す。 すると、男がベッドに頬杖をつき…空いた手が、あたしの右手と繋がっていた。
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