3315人が本棚に入れています
本棚に追加
「ななな何っ。この手!」
「何が?」
「何で握ってるのかって事!!」
男は固く握り締めた手に視線を落とし、「あぁ…」と閃いたように呟いた。
「うなされてたから。こうすれば安心するかと思って」
「なっ…」
目を細めて微笑む男。
その姿に、あたしは自然と顔が火照っていくのを感じた。
「少しは落ち着いたでしょ?」
…この笑顔はずるい。
怒る気なんてなくなって、代わりに鼓動が激しくなる。
耐えきれなくなって、あたしは男から目を逸らした。
「も、もう大丈夫…だから、離して」
「そ?よかった」
男はあっさり手を離すと、今度は傍らに置いてあった大きな紙袋を差し出してくる。
「なに??これ…」
中を覗くと、そこには女性用の洋服やら靴やら…大量に詰め込まれていた。
………なぜ。
最初のコメントを投稿しよう!