名前―name―

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「ななな何っ。この手!」 「何が?」 「何で握ってるのかって事!!」 男は固く握り締めた手に視線を落とし、「あぁ…」と閃いたように呟いた。 「うなされてたから。こうすれば安心するかと思って」 「なっ…」 目を細めて微笑む男。 その姿に、あたしは自然と顔が火照っていくのを感じた。 「少しは落ち着いたでしょ?」 …この笑顔はずるい。 怒る気なんてなくなって、代わりに鼓動が激しくなる。 耐えきれなくなって、あたしは男から目を逸らした。 「も、もう大丈夫…だから、離して」 「そ?よかった」 男はあっさり手を離すと、今度は傍らに置いてあった大きな紙袋を差し出してくる。 「なに??これ…」 中を覗くと、そこには女性用の洋服やら靴やら…大量に詰め込まれていた。 ………なぜ。
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