3315人が本棚に入れています
本棚に追加
「それにミリタリーコート合わせて……」
やたらと慣れた手つきで洋服を選んでいく男を、あたしは呆然と見つめる。
開いた口が塞がらない。
増え続ける男の謎。
「じゃ、俺リビングにいるから。支度終わったら来て」
「え?あ、ちょっ……」
コーディネートした服をあたしの手に預けると、男はさっさと寝室から出ていってしまう。
パタンと扉が閉まり、訳もわからないまま取り残された。
「…なんなのっ?」
とりあえず、今は服のことは置いといて。
…今から外に出る。
それなら行き先は?
考えられる場所なんて、1つしかない。
「家に帰らされるかな…?」
仕方のないこと。
1日置いてくれただけでも感謝しなきゃいけないんだ。
間違っても「帰りたくない」なんて言えない。
言えるわけない。
手渡された洋服に着替えると、あたしは重い足取りで男の待つリビングへと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!