天然―nature―

11/11
前へ
/310ページ
次へ
泪が家を飛び出した理由。 伯母を含め、あの家の住人の事。 それどころか、遥斗は泪の名前、年齢すら進んで聞こうとはしなかった。 「…聞いてほしいの?」 「…」 聞いて、ほしいのかな。 自分でもよく分からない。 だけど、事情も何も聞かずにここにいさせてくれる遥斗が、正直理解出来なかった。 何の見返りも求めずに。 「誰にだって、知られたくないことはある」 顔を後ろに向けると、天井をぼんやりと眺める遥斗が映る。 その姿が暗闇に消えてしまいそうに、儚く見えるのは気のせいだろうか… 「だから、泪が話したいと思ったら話せばいいよ」 「…うん」 どうしてだろう。 意味深に聞こえる言葉。 遥斗にもあるのかな? 人に知られたくない事が。 辛い過去、とか… そんな事を考えながら、泪は重たくなった瞼をゆっくりと閉じた。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3315人が本棚に入れています
本棚に追加