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目覚めると、そこは白い部屋だった。
辺り一面、真っ白だった。
冷静に見てみれば実際は白などでは無く、壁は淡い水色で証明はオレンジがかった物だったのだが、長い間暗闇の中に居た私には、その部屋は十分に真っ白な世界に見えたのだ。
ふと、自分が横たわっているベッドの隣に、この部屋には似つかわしくない真っ黒なスーツを着た初老の男を見つけた。
何故此処にいるのか、誰なのか
それを尋ねようと口を開くと、初老の男が静かに微笑んで、何も言わなくてもいい、と言うように首を横に振った。
「もう、終わったよ。君に用は無いんだ。」
それを聞いた私は、何故だか急に笑いがこみ上げて来た。
何が可笑しいのか、何故自分は笑っているのか
そんな考えとは裏腹に、私は笑い続けた。
まるで、心底面白いのだと言うように。
まるで、人を馬鹿にしたように。
心から、体全体を揺らして大きく声を上げて笑った。
暫く、静かだったその部屋の中には私の笑い声が響いていた。
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