1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
今日も、もう直ぐ夜が明ける。
ベッドに寝転んだまま、もう既に日の出始めている窓の外を、佐伯律子は眺めていた。
現在高校生である律子は、本来ならばこの時間、明日の学校に備えて睡眠を取らなければならない。
しかし、律子は眠っていなかった。正確には、眠れなかったのだ。
今日も寝られなかったな、と一人物思いに耽りながら気だるそうにベッドに横たえていた左腕を持ち上げて手首をジッと眺めた。
数え切れない程の無数の切り込みが、そこにあった。
律子はその傷をボンヤリと見つめて、一つ溜息を落とした。
この傷は、誰か他人に付けられた物ではない。
自ら、手首にカッターの刃を立てて付けた物、所謂「リストカット」の痕だ。
律子の場合、学生である故に制服を着なければならない為あまり目立つような痕は残してはならない。
リストバンドで隠れる範囲で傷を作る。
律子なりに配慮しながら、毎晩手首に刃を立てていた。
最初のコメントを投稿しよう!