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──ま、一応って事でね。
心の中で独りごちて、僕の体は転落防止の役にはてんで立ちそうもないくらい低い柵を越え、足を地上数10メートル離れた空間に投げ出すかたちで座り直す。
すると今から僕がすることを知ってか知らずか。
空はその心を曇らせていき、先程までの笑顔は成を潜める。
さっきよりも強い風が
僕の前髪を、シャツを、心を、揺らし続ける。
湿り気を帯びたそれはもうすぐ空が涙を流すことを告げていた。
僕はそんな表情の変化を殆ど無視しながら空を見上げ、安らぎにも似た感覚を知る。
終わりなく、全てを包み込む其れは宇宙の果てのなさを表しているようで。
ふと視線を落とせば、狭く囲まれた中庭の石畳がすぐそこに見えるようだった。
何て、低い。
普通の人なら恐怖やら何やらで目がくらむのだろう。
だけど僕にはこんな距離、無いに等しい。
全くもって馬鹿馬鹿しい。
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