深夜の訪問者

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「お前その真珠いくらで売れたと思う?」   「そんな事知るわけないだろ…」   眠気覚ましのコーヒーもすっかり覚め時刻は4時を示していた   「1000万…」   「は?」   「だから。1000万で売れたんだぜ、その真珠!!」   もう明け方だというのに鼻息は荒くヤツの熱弁は続く   「そんなわけないだろ?常識で考えろ。たかが真珠に1000万だなんて…」   「だが真実だ。一獲千金も夢じゃない!!」   「アホらしい。等々頭のネジも吹っ飛んだか?それとも、詐欺にでも引っかかってるのか?」   あまりにも馬鹿らしい話に席を離れようとしたが、それは難なくアイツの手により阻止された   「嘘じゃない。俺を信じろ。」   幼少時代からコイツは俺の前で嘘をついた事はない。   それは、紛れもない事実である   俺が保証してやろう。   だが今回はあまりにも馬鹿らしい  人形が涙ってのも嘘っぽいし   ましてや、真珠なんて…   科学が発達した現代だって容易ではない   しかも、たかが真珠に1000万だなんて…   詐欺以外何物でもないだろう。   「信じてもらえなかったみたいだな…」   俺が考えている間にヤツは荷物をまとめ始めた   「帰るわ…こんな時間に悪かったな…」  寂しげな笑顔で帰ったアイツ   今更考えたらアイツはいつも嘘つき呼ばわりされてた。   七色に光る蝶がいるとか   山の天辺の泉には鯨がいるとか   だけど、誰も信じなかった   アイツの周りには自然と人はいなくなり   残ったのは俺だけ   逃げ損ねたのかは謎だが、アイツの隣は居心地が良かった   馬鹿もできたし、山の上に住む鯨も見た   だから一緒にいた   遠くから聞こえるサイレンが嫌な予感を感じさせた
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