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スラムの中で唯一のバーである、「リバティー」のカウンターに白人の男が座っていた。
………というより潰れていると言った方が適切だろう。
酔い潰れている彼の周りには相当な数のボトルやグラスが散らばっている。
『お客さん!お客さん!!』
店員だろうか必死に潰れている男を起こそうと声をかけ揺すっているが男は起きる気配もない。
『ったく…トラッシュさんが死んじまって辛いのは分かるが…毎日酔いつぶ』
『……おい。』
酔い潰れたと思っていた客に急に話しかけられた店員は驚き言葉を止めてしまった。
『なんだ、ディンさん。起きてるならそう言って下さいよ』
『うるせ、今おれも起きた所だ。』
ディンと呼ばれた酔っぱらいはうつ伏せに伏していた体を起き上がらせ真っ直ぐにバーテンダーを見据えた。
『トラッシュの兄貴は死んじゃいねぇよ。必ず俺が兄貴を見付だす。』
『はぁ、すいません。』
『すいませんじゃねぇよ!馬鹿!!兄貴の事を何もしらねぇくせに分かった口聞いてんじゃねぇよ!!
……今日はもうしまいだ。金ここに置いていくぞ。』
とクシャクシャの紙幣を一枚カウンターに置きバーを出ていった。
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