陽光の少女

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    (…今日も雨か…)     窓の外には、ぽつぽつと雫が降っていた。     『本日梅雨を迎えた北陸の…――』     テレビから天気予報の話が聞こえる。     プツン…     (はやく行かなきゃ… 遅刻しちゃうな…)     そうして迎えた。 私が大嫌いな、雨が最も多く降る時期が………       「…いってきます…」     私は、玄関の下駄箱の上に置いてある写真にそう言って家を出た。   ……母は、永遠に変わらぬ笑顔のまま、私を見届けた。   もう…この世界には居ない。     …お母さん…     悲しむのにも飽きたのかもしれない。 それとも、成長? 今では顔を変えずに、母の写真に「いってきます」を言えるようになっていた。     透明のビニール傘を開いて、灰色の空の下。 私は、傘にこぼれる雫さえ、あまり見たくなかった。     (…何で家にあるのが透明なビニール傘ばっかり… 雨…見たくないのに…。)     今から学校。 自宅から学校までそう近くはないのだが、慌てて走れば雨の跳ねた雫が自分に飛びかかるだろう。  
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