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道行く人々は、当たり前に傘を開いて歩いて行く。
赤、黄色、水色、黒や柄の入ったものなど。
(…全く)
私が道を歩いていると、一人、傘もささずに空き地に立っている娘が居た。
何気なく視線がその娘を捕えてしまう。
淡い水色の髪で、最初はご老人かと思ったが、顔は少女そのもので幼い。
(…何あれ…コスプレ?)
その娘は、日本の昔話などにも出てくる羽衣…というのか、それをつかんで居た。
そして、それだけは、まるで別の空間にあるかのように濡れず、ふわふわと彼女の頭上に弧を作っていた。
その娘は…なんだか、幸せそうなのだ。
幸せそうに、雨が…雫が落ちてくる灰色の空を見上げているのだ。
(…何馬鹿なことやってんだか…)
私は、すぐ前に向き直ると学校へと進んだ。
校舎の前までくると、流石に生徒達だけになったが、中には傘をささないで校内まで走っているやつもいた。
やべぇ、濡れた濡れた、とか笑いながら叫んで。
(…馬鹿じゃないの?)
時計が遅刻しそうな時間をさしたが、私はあくまでもゆっくり校内に入った。
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