とまらない心

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「全く遅いわねぇ。いつまで待たせる気なのかしら」 「五月蠅いぞ筋肉女」 「アンタこそさっきから落ち着きがないわよ?変態魔導師」 「喧嘩売る気か怪力ゴリラ」 「望むところよムッツリスケベ」 「誰がムッツリだ!」 「アルルがラグナスと一緒に行くって言ってから妙に機嫌悪いわよ。気になるならアンタが行けばよかったじゃない?」 「おい…何か勘違いしてないか?」     根っから気が合わないのか、こうして言い争うのはいつもの事。    コンコン   「やっと来たか」   シェゾはふう…と、ため息を吐きながら、ひんやりとするドアノブに手を掛けた。     部屋の中はベッドが二つと小さなテーブルが一つあるだけの簡素な造りだ。 旅の宿にはこれで充分である。 アルル、ラグナス、シェゾ、ルルーは4人で旅をしている。 そしてこの町で宿を取る…前にやらなくてはならないことがあった。   それはクエスト。要するに日雇いのバイトのようなものだ。   腹は減っては戦は出来ぬ…一所に留まらない旅人としては、日々の生活費の調達は死活問題。 なので、立ち寄った町ではこうして今後の旅費を稼がねばならない。     「こっちの依頼の方が時間がかかるからと言うから俺が行ったのにな。何かあったのか?」     自分で勝手に淹れた紅茶を飲みながら大して興味なさそうに聞く。 立って飲むなよ、と言いたいが座るところがベッドしかないので仕方ないか、思い直す。   もう一つの依頼…それは現地から日帰りで帰れない程の距離にある地での仕事で、4人の中で唯一転移魔導の扱えるシェゾが担当した。 お陰でアルル達が戻る一時間前には宿屋に戻っていた。     「洞窟の魔物の数の調査というのだったけど、予想よりも深くてね…」     アルルと二人でも苦戦する程の魔物が次々に出る空間だった。 アルルが元凶に気付いたことで解決する事が出来たのだ。     「ほぅ。アイツでも役に立つことがあるんだな」 「勘は良いと思うな。一緒に闘うとよく分かるよ」 「…それは良かったな」    カチャ。     「あれ?シェゾは?」 「先に部屋に戻ったみたいだよ」 「暗い奴ねー。一言言って行けばいいのに」 「虫の居所が悪かったのかな…。オレも戻って休むよ、二人とも早く休めよ?」     そう言ってラグナスも部屋を後にした。   (あいつは気付いてるのかな)   俺がアルル、と口にする度に自ら発する空気に。     .
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