13人が本棚に入れています
本棚に追加
「……い…!……おい!」
「っ!…しぇ……ぞ」
「こんなとこで何してる!」
「……し…て、放して!」
何でここに?
力の入らない体では抵抗も無に等しい
「こんなに震えてる奴を放っておいたら後で五月蝿い奴らがいるんでね」
「ヤメ……」
入って来ないで
「これ以上触れないで。ボクを、乱さないで」
自分でも何を言ってるかぐちゃぐちゃで
「もう…」
わからない
「あぁ?俺に指図するな」
瞬時に目の前が闇に染まる
「放って置けねぇんだよ」
ぽん、と。小さな子を宥めるように頭に降ろされる彼の手。
それは遠い記憶の彼方の、いつも背中ばかり追いかけてた父の手のようで。
不思議と安心できた
「何だかわからねぇが、んな無防備晒すんなら…」
迫力の籠もった切れ長の目が悪戯に細められ 近づく
「襲うぞ」
「バ…っバカ!!」
ドン!と両手で力一杯に押して突き放す
(あ、あ、危なかった!?)
「変態!何するのさ!!」
「くくっ…」
「何が可笑しいのッ!」
「いや。泣いたり怒ったり忙しい奴だなぁ、と。そんな赤っ鼻で怒鳴っても全然迫力ねぇぞ」
「ぐっ…」
人の気も知らないで、勝手なことばかり言う。
「ふふっあは、あはははは!」
なんだか可笑しくなってきて、気が付くと笑っていた。
思い切り泣いたことで、胸の支えが取れたみたいに心が軽くなった。
「…やっと笑ったな」
「え?」
「いや、何でもねぇ。気が済んだんなら戻るぞ。明日も早いんだろ?」
「ちょ!ちょっと待ってよ!」
(一体何しに来たのさ全く!)
ホントは分かってたけど、ね
それがキミなりの優しさだってコト
.
最初のコメントを投稿しよう!