十四歳...

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   美幸はこの田舎町で、最も生徒数の多い中学校に通っていた。友達とも割と上手くやっていた。割と……。    閉鎖的な田舎町ゆえに、彼女の両親の過去を知っていて、陰でコソコソ言われることもあった。美幸は、父親が二十歳、母親が十八歳の時に生まれた。それだけで、充分に噂のネタにされる。その上、彼女の両親は、美幸が生まれる前、何度も警察に厄介になったことがある、有名人でもあった。 「美幸ちゃんとこのお母さん、若くていいわね……」  幼い頃の美幸は、周りの大人から、そう言われるのが大嫌いだった。 『この子が、あの山下んとこの娘……』  言葉の裏に、そんな気持ちがあることを察していた。  自分がちゃんとしないと……  真面目に働く、子煩悩な両親しか、美幸は知らない。自分が間違った道を歩けば、せっかく頑張っている両親の努力が無駄になる。成長するにつれ、そう思うようになった。  それでも、友達や同級生が、美幸の両親の過去に触れることはある。時に冗談めかして、時に本当に無邪気に。  過去は過去なのに……  そんな時でも、美幸が普段と変わらない笑顔で話していると、周囲は感じていた。自分達の残酷な問いかけが、チクチクと彼女を刺しているとは少しも思わずに。  
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