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初めて塾の建物に入った途端、先に来ていた友人が数人、美幸を取り囲んで声を上げた。
「ミーっ! 凄いやん!」
「あんた二番よ二番っ!」
「えっ?」
意味の分からない美幸を、お節介な友人達は、掲示板の前に引きずって行く。
「ほら、あんた一番上のクラスよ。……すごっ」
「マジ……?」
何度見ても、自分の名前が上から二番目にあることが、彼女には信じられなかった。テストには、得意な分野の問題ばかりが出ていたので、そう悪い点数ではないだろうと安心はしていたけれど。
教室の座席までが、成績順だということに、更に驚きながら、美幸は何とか自分の教室の自分の席にたどり着いた。教室を見渡すと、顔を知っている者は居るが、親しい友人の姿はない。美幸は妙な心細さに包まれていた。
しばらくして、不機嫌そうな男子が、美幸の後ろを通って、右側の席に乱暴に腰掛けた。怒ったような、どこか具合でも悪そうな、そんな表情で、気だるそうに背もたれに寄りかかっている。
この人が一番なんよね……
ようし……と、美幸は思った。どんな人なのか、興味が湧いたので、話しかけてみようと思った。
「ウチ、今日からなんよ」
そう口を開こうとした時、その男子が美幸の方を向いた。そして彼は、
「クソが……」
と、毒づいた。
えっ……。何コイツ?
美幸は、開きかけた口を慌ててつぐみ、テキストを読み始めた。
嫌な奴ぅ。絶対抜いてやるけぇ……
小さな美幸の、闘志に火が点いた。
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