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聡志は美幸が脅威であることに、すぐに気が付いた。うかうかしていると、抜かれかねないぐらいの気迫が、その小っちぇ女から感じられた。
美幸は美幸で、隣の嫌な奴の背中に、手が届きそうで届かないことがもどかしくて苛立った。彼女が一歩進めば、彼も同じだけ進んでしまう。何度も何度も、後ろを振り返り振り返りしながら、トップを走らねばならない聡志より、追いかけるだけの美幸の方が気楽だったのかもしれないが。
挨拶さえ交わさない二人は、静かに、激しく火花を散らしていた。そして、言葉には決して出さないが、二人とも同じ考えにたどり着く。
全部満点じゃないと勝てなくなる……。何? コイツ……
美幸のせいで、三番手に落ちてしまった、優等生を絵に描いたような男子も、最初はこの争いに参戦しようとしたのだが、すぐに置いてきぼりになってしまった。二人の勢いは群を抜き、その争いは熾烈だった。何食わぬ顔をしながら。
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