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苛烈な高校受験など、無縁な田舎町だった。大学に行きたいと思えば、普通高校。高卒で就職してしまうつもりなら、商業高校か工業高校。高校ぐらい出ておかねば……という者の受け皿となる私立高校もあった。
高校に進みたいのなら、解答用紙に名前を書き忘れるぐらいのことをしでかさない限り、その希望が叶えられる。そんな、ある意味素敵な町に二人は暮らしていた。
いかなる経営戦略を持って、その進学塾がこの田舎町に進出してきたのか。塾の営業担当者は、町中をくまなく回り、善良なる親達に不安の種を植え付け、たぶらかして回った。
「受かるだけで、本当に良いのですか? ご家庭での学習時間は足りていますか? 部活一本槍になっていませんか? 私どもにお任せいただければ……」
電車が一時間に四本しか通らない、ちっぽけな駅舎の前に、立派なビルが完成する頃には、その町にある数校の中学校から、かなりの人数の生徒がこの塾に送り込まれることが決まっていた。
自分で希望した者、友達に誘われた者、親に強制された者……。
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