十四歳...

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   四月。初めて塾を終え、二十二時半過ぎに帰宅した聡志は、冷え切ったおかずをつつきながら、珍しく自分から口を開いた。 「塾の席って、成績順でね……。俺、一番やったみたい」  わざわざ一時間以上かけて、私立中に通っている甲斐があったなと、得意な気になる。土建屋を営む父親は、酔っ払って既に寝ていた。 「へぇ。アンタみたいなんが一番かい……」  母親は呆れたような口調で続けた。 「……やっぱりこんな田舎は、レベルが低いんやな。高い金使うて、私立行かせよるんやから……。腐っても鯛なんやろうね」  その一言が、夕食の味を奪い去る。聡志は、自分の浅はかさを呪った。  小学校に入った時から、テストで九十点を取ろうと、九十九点を取ろうと、 「こんな簡単な間違いを、なんでしたの? ノータリン!」 と、拳骨を喰らった。  百点を取れば取ったで、誰にでも分かる簡単な問題だったのだ、と言われた挙げ句に、 「ミミズが這うような字書いて……」 と、やはり拳骨を喰らった。  頑張るだけ無駄なんよな…… 「……アンタが賢いわけがない。周りの程度が低いだけよ」  母親の言葉に頷きながら、聡志は、味までしなくなった冷たい夕食をかき込む。 「いい加減、バレー辞めたら? 部活なんかしないで、早く帰って来れば、何回もご飯の支度せんでいいんやし……。私も色々忙しいんよ。アンタは、おもしろおかしくバレーやっときゃ日が暮れて良かろうけど……」  高い金払って、私立中や塾に入れたのはそっちだろ……  いつものように、口答えは心の中だけで済ませた。  最終的に決定したのは聡志。そういうことになっている。両親は、聡志が、自分で選んで決めたのだと言い張る。  当の聡志は、両親に強制されたとしか思ってはいなかったが。  
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