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「おい、大丈夫か?アゲハどうしたんだ?」
父さんがアゲハの頬に触れる。
瞬間、さっ、と父さんの顔が青くなる。
父さんは僕からアゲハをむしり取ると、バタバタと車に運んだ。
そして携帯を取り出すとどこかに電話をかけはじめる。
その間、アゲハはぴくりとも動かない。
僕はふらふらと立ち上がる。
足がもつれて、みっともなく転んでしまう。
いってぇなぁ……。
再び立ち上がろうとして気付いた。
太陽が出ている。
ああ、また暑くなるのか。
暑く……アツク……あたたかく……。
父さんを見る。
父さんはなぜか混乱しているようで、電話の相手に「早く!」とか「死んでる!」とかを繰り返している。
……そうだよ、「ひ」があればいいんだ。
そうすればアゲハは「あたたかく」なる。
僕は父さんに向かって一直線に歩くと、ズボンのポケットに手をつっこむ。
いつも、ここに入れているはずだ。
なにやってんだ、と父さんが言った気がする。
……無い。
僕は無視してもう一方のポケットへと手を入れる。
―――あった―――。
よかった……これでアゲハは―――。
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