真夏の昼の夢

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暑い。 真上にある大きな太陽がジリジリと空気を焦がし、僕のひたいに玉の汗を浮かべる。 ……ああ、伸びた髪が頬や首筋にはり付いて鬱陶しい。 明日にでも切りに行こう。 「おにいちゃん」 首にかけたタオルで汗をぬぐっていると、舌足らずな声で呼ばれた。 「ひまわり、大きいね」 声の主は今年七歳になる僕の妹で、つばの広い麦わら帽子の下、向日葵に負けないくらいの笑顔を見せている。 「……そうだな」 僕らは今、向日葵畑に居る。 夏休みの絵日記のネタにと、父さんが連れて来てくれたんだ。 妹、アゲハの言うとうり、向日葵の背は、成長期に入ったばかりの僕のそれよりも高い。 「おにいちゃんよりも大きいね。パパよりも大きいかな?」 「……」 なおも無邪気に喋るアゲハに、それはないだろ、と心の中でつっこむ。 奴は190センチを優に越えるバケモノだ。 手なんか、僕の三倍はある。 ちなみに、その父さんは、あちぃ、と言って車から一歩も出ずに寝てしまった。 何のために来たんだ……。 ……まあ、絵日記のためなんだけど……。 「おにいちゃん、どうしたの?」
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