真夏の昼の夢

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不意に、アゲハが僕に心配そうな声をかけてきた。 その顔は、少し曇っている。 ……黙ったままなのが心配だったのか。 僕はポン、とアゲハの頭に、麦わら帽子の上から手を乗せる。 「なんでもないよ。ただ、ちょっと暑くてぼーっとしてただけさ」 僕が微笑みながら言うと安心したのか、アゲハはパッと笑顔になった。 そしておもむろにポケットからピンクのハンカチを取り出すと、アゲハがあせふいてあげる、と言った。 僕が少しかがんでやると、アゲハは嬉しそうに手を伸ばし、僕の顔をそのハンカチでぬぐう。 「……」 僕はまぶたを閉じる。 ……こうしていると、母さんを思い出す。 母さんはアゲハを産んですぐに死んでしまった。 元々体の弱かった母さんは僕を産んだ後、医者から二人目は無理だと言われたらしい。 二人目を産むときは、死ぬ時だと。 だけど七年前、母さんは自分の命よりもアゲハの命を選んだ。 もちろん、僕や父さんを含める周りは反対した。何度も何度も説得した。 今ある家族と自分の命を大切にしろ、という伯父さんの言葉に、母さんはいつものように微笑みながら言った。
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