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「……っ」
目が覚めた。
どうやら、アゲハの寝顔を見ているうちに僕も眠ってしまっていたらしい。
……嫌な夢を見たな……。
アゲハが僕を拒絶する夢なんて……。
隣を見る。
アゲハはまだ眠っている。
そっと、頬に触れてみる。
ああ、やっぱり服が濡れて冷えたのかな、ヒンヤリしている。
……温めないと……。
僕はボンヤリとそんなことを考えて、アゲハを抱き寄せる。
ああ、こんなに冷えてる。
風邪、ひいちゃうかもしれないな……。
バス停の前に一台のワゴン車が止まる。
「いや、悪いな。ついさっきメール見たばっかなんだよ」
言いながら、父さんが車から降りてくる。
うるさいな。アゲハが寝てるんだよ。
静かにしろ。
「ん?なんだ、アゲハ寝てんのか?」
ゆっくりと近付いて来る父さんを睨み付ける。
そうだよ。だからもっと静かにしろって。
「どうした。なんでお前泣いてんだ?」
は?僕が泣いているだって?
何言ってんだこいつ。
僕はさらにアゲハを抱く腕に力を入れる。
ああ、ちくしょう。
全然温まらないよ。
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