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ノリコは浴槽の残り湯を飲み続ける宗典を止めた。
「何をする!ワシは喉がかわいておるのじゃ!!おぬしははようにげなさい!」
アニキがわけのわからないことをいうので、とりあえずなだめようとするノリコは
コップに水をついでもってきた。
タケゾウは我にかえり、コップの水をグビグビ飲む宗典を見ていた。
宗典の言葉遣いから、何かおかしい気がし、昔読んだ柳家に伝わる書の話を思い出した。
歳をとると最近のことより
昔のことのほうがよく覚えている。
タケゾウが昔読んだ書の内容とは、先祖の宗典に突然異世界の者の魂が入り、平成という時代の武典と名乗ったというものだった。
武典という名前を武典につけようと言い出したのはこのタケゾウで、
そのときはなんとなくカッコいいイメージがあったからとかで、物語を思い出した時タケゾウは、はっと気付き動揺したが、「これも運命」とすぐにわりきった。
タケゾウは宗典に自己紹介を頼んだ。
すると「人に聞くには自分から」と言われ、タケゾウは赤裸々に自分の全てを宗典に紹介した。
ノリコはひいた。
宗典は敵の気配がなくなっていることに気が付き、この状況を冷静に把握しようとつとめた。
そして自分の情報をタケゾウにつたえた。
タケゾウは驚いた。
昔読んだ書と一致している。
浅間軍に攻めた際、倉でみつけた鏡で魂を入れ替えられた武将と異時代の青年の話。
最後もとにもどり、宗典の臨終の際、長男の宗光に、「今まで誰も信じてくれないから話さなかったが…」と語った話を宗光が書に記したという話…
そこまで覚えていながら肝心の戻り方がわからない。
書はタケゾウの兄が住む実家にある。
宗典は「それくらいのことがなければ今の状況はありえぬ」と、その話を信じた。
一方、「そういう話は嫌いじゃないけど、お兄ちゃん部活は?」とノリコは冷静だった。
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