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はじまり
「……そろそろか。」
結城皆人は今日、転入するクラスを見る。
「2―A、か。」
そう呟くと、窓際にもたれかかる。
「また、一から友達作り直しかぁ…」
はぁ……、とため息をつく。
結城皆人の転校は珍しいものではなかった。ほとんど親の仕事の都合(主に父親)で小学校に3回、中学で2回、そして高校で1回。つまり今回である。
中学までは良かった…いや良くないがまだ良かった。しかし高校は……。
「しかし転入試験受かって良かったー。」
そう、高校とはそういう所だ。
受験して受かれば入れるし、失敗すれば入れない。
これを失敗すると皆人は県外の高校を受けなければならなかったので受かって、ほっとした。
しかし、やはり転校というのは皆人は嫌いであった。
もちろん友人達のことである。
勉強?んなもん高三から考えろ。
「やっと仲良くなったのになー。」
再びため息をつく皆人。
そう、今は8月。
ちょうど皆で夏休みの計画を立てる時期だ。そんなときに父親の都合…。皆人は少しだけ父を恨んだ。
しかし、これが初めてじゃないのだ。
夏休みに食い込んだ回数は3回。んでもって冬休みは1回だ。
まあ、今回は食い込まないだけ幸運だろう。
すでに朝のホームルームは始まっている。
皆人は自分の学生服が変じゃないか確認する。
「ボタンは…うん、大丈夫。後は………うんオッケー。」
「じゃあ、転入生。入ってこい。」
皆人は先生に呼ばれたので慌てて教室の扉を開けた。
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