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綺麗なきれいな、朝の光。
地上から顔を出した太陽は、自分が出てきた地上を照らし出した。
小鳥のさえずりと、太陽の美しい光で、起きた。
「…ふぁ~、よく寝たぁ」
寝癖のついた金髪を、手ぐしで軽く直しながら、木から上半身を起こす。
木の上での就寝は久々だと、天使は軽く眉を寄せる。
「…にしても、相変わらず綺麗な太陽だね」
微笑んだ顔が、少し羽で隠れた。
金髪の美しい顔立ちをした天使が、地上を迂回していると、
「こんにちは」
視線を少し下げると、女の子が笑っていた。
「こんにちは」
挨拶を返した天使に、女の子は嬉しそうに言う。
「わたし、天使さまを見るのははじめて」
何でもないように言う女の子に、天使は慌てて周りを見回した。
「しー!ダメだよ、他の人にバレちゃうでしょ」
長いまつげを太陽に光らせながら、天使は口元に人差し指を当てた。
女の子は不思議そうに、小首を傾げた。
「他の人には、内緒だよ?」
天使が言って、女の子は笑って天使に自分の小指を差し出した。
「約束ー」
若干驚いたが、天使も笑って小指を差し出す。
「うん、約束」
絡ませた小指は、まるで天国へ行くための切符のようだった。
少しして、天使と別れた女の子。
女の子は、お使いの途中だった。母親に、仕事を頼まれていたのだ。
゙お前が近付いて、気を逸らしている奴から、器用に財布を取ってくるんだよ"
女の子は素直にも、そのお使いを果たそうとしていた。
天使に会えた喜びを胸に、急ぎ足で道を渡る。
信号機などない、車通りの多い道を、女の子は渡る。
優しそうな男の人を目掛けて、
走った。
道に、 飛び出した。
一瞬、女の子は天使を思い出した。
優しそうな、美しい、笑顔の似合う天使を。
それから、前を見る。
優しそうな、優しそうな男の人が、女の子を見て―――
天使が振り返った時には、女の子の姿はなかった。
ただ、天使は見た。
車通りの多い、道の上。
そこに、一人の死体があった。
天使が少し視線を上げると、
優しそうな黒髪の男の人が、
冷たく微笑んでいた。
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