タイオン

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  僕は只の金属で出来た塊。   君は肉の塊。     『寒いね?』     僕は温度なんてわからないから、君の言う“サムイ”がわからない。         僕は温度のわかる君が羨ましくて、体温が欲しくて……   只、それだけで        ―人間になりたかった―               君の血と肉を僕のデータにインプット。   単純に僕は君を取り入れれば人間になれると信じて。     テレビで見たように、君の心臓に包丁を刺す。   足、腹、手、首、頭。   足から順に切る。 君はこの切る作業が“料理”だと教えてくれた。     そうだ。 “食料”は冷蔵庫の中だったね。        毎日毎日 オイルの代わりに君の血。 元から何かを食べる機能なんて備わっていない腹に君の肉。                 僕は人間になれた?     頭がグルグルする。 接合部から煙がモクモク。 ピー…ガシャガシャ……ピ―――――             どうやら 人間になるには莫大な容量が必要なようです。   容量が少ない僕は中身が錆びて動けなくなって       君を失って希望を失って   僕は冷蔵庫の中の半分以上残った君を見ながら 今日、故障しました。         NEXT→あとがき。  
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