466人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
一之幕
『女の肉は柔かい。まして、それが童女ならばなおさらなっ!!』
黒い塊の妖(あやかし)が、真っ赤な口を開けて、目の前にいる、童女を食らう。
「美味いか?」
『ああ、美味い。』
………今まで食べた中で一番美味だ。
「そうか。」
………なんだ?おかしいぞ?俺はダレと会話している?
『こんなに美味い肉は初めてだ。』
オレはどうして、答えてる?
「それは良かったな。………ところでお前。自分の足はどうした?」
足……?
妖は、言われて視線を自分の足に落とす。そこには、ポッカリと何も無く、赤い液体が滴り落ちていた。
『足がっ!俺の足がっ!』
「良かったな。……美味かったんだろ?」
……美味い?……じゃあ、あの肉はっ?!
妖は、顔を上げると初めて会話をしていた相手の顔を見た。
月夜の光りに照らされしその容貌は、妖達の中では知らぬモノが居らぬ程の有名人だった。
『お前は……安部晴明っっ!!』
妖の叫びに晴明は答える。
『お前ごときが、俺様の名を呼ぶなよ?』
妖は、晴明の笑みを見た瞬間、自分の最後を覚った。
最初のコメントを投稿しよう!