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「逃げられるとでも思ったか?」
静寂が支配する暗い森の中、一人の女性が降り立った。
壮絶なまでの美を纏う、紅き女。
髪も瞳も衣服も紅く、美しい。
『昏きもの』、俗に言う吸血鬼と呼ばれるもの。
悪魔のような漆黒の翼をたたみ、静かに目の前にいる男と対峙する。
彼女と対峙するのは、体を震わせている紅髪の男。
それを無表情に見つめ、彼女は言う。
「『紅』の掟、忘れたわけではあるまい……」
無表情に見えるが、その声には悲哀と自責の念がうかがえた。
怯えながらも、男はハッキリと答える。
「忘れるわけがない、『人は見守るべきもの、干渉してはならない』、そうだろ?」
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