916人が本棚に入れています
本棚に追加
水中を、ふわふわと漂っていたときの感覚は、そこにはもう、ない。
痛みが走ることを覚悟して、閉じていた目を開く。
わたしは、冷たい木の床に伏せて居た。重たい首を持ち上げると、わたしの尿が、扇風機の風に押されて床の上を這って進んでいくのが、見えた。
さっきまでテーブルの上で活躍していた、小さな、わたし専用の茶碗が、真っ二つに割れてわたしの横で死んでいる。
それを母がてきぱきと、新聞紙にくるんでいた。
母の、白い腕が。
最初のコメントを投稿しよう!