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とまとがキライです
あいつは詐欺です
なのになぜか冷蔵庫にはいってるんですよね
外見は赤子の尻みたいにつるつるなのに
中身なんて想像もしたくない
包丁で真っ二つにしたら
きっといやーな汁が溢れ出すの
あーきたない
きたない
きたない!
どうしてこんなにきたないの。
とまともみかんもなすもきゅうりも(そのほかいろいろ)
中身がグロテスクでたべられないわ。
っていう長い独り言のあと
とまとがいいました
「それはいきてるからですよう」
「それにしてもとまとは野菜の中でも反則級ですよ」
「だいたい何でとまとなんか食するのですかあ」
「だから私は食べたくないんですって」
とまととはなかなか会話が成り立ちませんでした
「肉類は問題外ですけどね」
「あーあれはないですね」
「同類嫌悪っていうか」
私がそう言うととまとはくだらなさそうに笑いました
「それにしてもにんげんの腕はきれいですね」
「とまとよりはね」
「脈のことはわかりませんがね、それにしてもきれい」
ぬらぬら
「わたしより真っ赤で、光沢があって、澄んでいる」
ぼたぼた
「わたしもこんな中身ならうれしいんですけどね、まあいちじくやざくろよりはましですよね」
びちゃびちゃ
「でももっと深いところまで切ればとまとみたいにグロテスクですよ」
「そこまでしないのがにんげんの美点ですね」
消費期限の切れたとまとは生意気で
指でおすと歯槽膿漏の歯ぐきみたいな感触なので
私はだいキライなのでした
(fin)
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